ame・著

 

 

嘉月ジュン、それが僕の名前だ。

 

 

もういいかい――

 

まぁだだよ―――

 

 

頭の中で響き渡る。

 

僕はあれから逃げて逃げて逃げまくった。

 

 

 

大丈夫。

 

だれかの声がした。

でもだれもいない。

 

あなたはもう大丈夫よ。・

ぼくはそっと抱き締められた。

あたたかい。

 

君は??

 

私は、私。あたためるだけに存在する下らない存在。

それでいいじゃない。

 

 

僕はジュン。

 

そう。よろしく。あなたは130人目だわ。

 

君は?

 

私はユリ。ゆりかごのユリ。単純でしょ。下らない。

 

何でそんな下らないというの。

 

だって、私は人を暖めて、でもそれはフィジカルな面でしかなくて。中身的には何もしてあげられなくて。あなたも苦しいでしょ。でも私はなにもしてあげられなくて。私にとって、私はなぜ存在しているのかわからない。あなたの苦しみは伝わるのに。何もしてあげられなくて。

 

ユリ。

僕はそっと彼女を抱き締めた。

 

??

抱き締められたのなんて初めて。

だってみんな、私に抱き締められて、それで満足して私の中から出ていくだもの。

 

 

ユリ。

僕はそっとユリに口付けた。

僕にはもうもう戻るところがないだ。

ここにずっといていいかい?

 

 

――だめよ。・

あなたこそここから出て行って、はやく・

 

なんで?僕はもう疲れた。雨に打たれた猿のように。もうどこへも行きたくない。ユリと一緒にいる。

 

 

だって私は、あなたの苦しみ。狂気。たくさん感じるの。辛いの。あなたの未来も見えるの。

 

ぼくの未来??

ぼくはもう一度ユリに口付けた。あたたかい。眠ってしまいそうだ。

ぼくの未来に何がみえる?

 

 

―――何が見えるのだろう。

あの子はどうなったのだろう。どうしても僕には思い出せない。

あの時、なぜぼくはあの子を殺してしまったのか。

 

――もういいかい。

 

――^まぁだだよ。

 

問いがあれば答えがある。答えがあるから問いがあるのではなく。

それがとりあえずのテーゼ。

 

問いがあるから、人々はそれに答えようとして四苦八苦して翻弄する。

でも結局何も見つからないのがオチだ。

 

僕自身多くの答えを求めて生きてきた。

やっぱり何もみつからなかった。

 

でも今ユリを見つけた。

答えを求めることを諦めたところでユリに出会った。

 

 

でももう遅すぎる。

 

僕はあの子を殺してしまった。

 

 

答えを求めて生きてきたら結局そのために生きているような自分になってしまった。

 

問いがあるから答えがある。

世の中には、様々なテーゼで満ちている。

でもそのテーゼが必ずしも正しいとは限らない。

 

僕の考え方に異論があるならいつでも願い出てくればいい。

 

僕は何でも受け入れてやる。

この世の中のどんな不合理な事象でさえ、僕は受入れてやる。

そうすることで僕は僕自身つなぎ止めることができる。

 

いつでもバラバラになる想い。

僕は。

僕は。

 

 

――もう行ったほうがいいわ。

 

ユリはそっと僕の耳に囁いた。