香奈・著

 

「光の声」

 

そこにあるのは、ひかり。

ほんの一粒の、ちいさなちいさなひかり。

 

僕は今、孤独の中に居た。

 

ただ真っ白で無機質な部屋の中。

 

僕は未だにその終わりを見つけることができないまま、

今という時間の中に立っている。

 

でもその中で、ある日突然誰かの声が聞こえた。

「君はどうしていつも一人なの?」

 

顔を上げると、なぜか部屋の中にベビーベッドが一つ。

その声はベビーベッドから聞こえてきた。

その声は、とても優しくて、僕はどうしようもなく

泣きたくなった。

 

「だれ?」

僕は尋ねる。

ベビーベッドを覗いてみる。

 

そこには誰も居ない。

「だれ? 僕の痛みに触れないでよ。

僕はもう、誰かのために生きようとしたりしないんだから。」

「君は間違ってるよ。」

「間違ってなんかないさ。僕はこのままでいい。

他の痛みなんか知らなくていいんだ。僕はこの傷を一生背負っていく。

そう決めた。」

「君は、とても一人よがりなんだね。」

「どうして? なんでみんな、僕の事を全部知っているような言い方をするんだ。

本当は何も知らないくせに。もう放っておいてくれ。」

「君は忘れていないかい? 君は今生きているけど、

同時に他の誰かに生かされているんだ。この世界の人たちは、

みんなそうやって生きてきた。」

「僕が誰かに生かされてるだって? 冗談じゃない。

僕は今まで一人だった。だからこれからも、ずっと一人で生きていくんだ。」

「それは違うよ。

君は初めから一人なんかじゃない。

勝手に孤独になっているだけ。」

「なんなんだよ。君は僕のなに?」

「・・・・・それは分からない。この世に存在しているようで、

存在しないものなのかもしれない。」

 

声は続く。

 

「でも、これだけは忘れないで。痛みを感じない人間なんていないってこと。

寂しくない人間なんて、いないってこと。」

 

そこで声は途切れた。

 

はっきりとそう分かった。

 

再び部屋を襲う沈黙。

 

「僕はまた一人なのかな…」

声に出して呟いてみる。

でも、なぜか前の気持ちとは少し違った。

あの声が知らせてくれたこと。

あの声が教えてくれたこと。

僕はその時思った。

決していい加減な気持ちなんかじゃない。

僕は今、確かに感じた。

抜け出せない迷路があるなら、ゆっくりと出口を見つければいい。

 

なら、答えは簡単じゃないか。

 

 

そうだろう?