ちるちる・著

 

「見返りのない愛」

 

 

君が生まれて、僕はとても嬉しかった。

いっぱい名前を考えた。たくさんたくさん悩んで迷って、

君に一番ぴったりであろう素敵な名前をつけた。

生まれたばかりの君はおぼつかなく、それでもどこか力強く、

真新しい命を生きようとしていた。

 

 

君は少しずつ成長する。

寝ているだけだったのが寝返りをうったり、そこから

ハイハイで動いてみたり。何かを支えに立ち上がろうともした。

そんな一つ一つの行動に、僕は大きな喜びを覚えた。

昨日はこうだったのに今日はあぁだったとか、君の成長への

発見は尽きない。ただ一つ、君が大声で泣きわめくたびに

僕は慌てふためき時々うんざりした気持ちになった。

 

 

歩けるようになると少しずつ言葉も覚えるようになった。

僕が『ぱ・ぱ』と言うと君は真似するみたいに

『あーあー』と声を出す。早くしゃべれるようにならないかと

期待が膨らむ。だけど、モノを覚えるにつれて何にでも

興味を示すようになり目が離せない。『それはダメ』と

いくら言っても同じことに繰り返し。僕の声がだんだんと

荒くなっていった。

 

 

そして、あっという間に大きくなった君。

 

 

前よりももっと僕の言うことを聞かなくなった。

むこうは遊び半分のつもりなんだろうけど。

こっちは腹ただしくてしかたない。

寝ている時は静かでかわいいのに。

このままおとなしくしててくれればいいのだけれど。。。

 

 

反抗期。

もう何を言っても私の言うことに反発。すぐ言い争い。

何がそんなに気にくわないんだ。

思わず、私は右腕を振り上げた。

 

 

私はあの子を頑張って育ててきた。

かわいがっていたはずが、何故。。。

何故こんな風になってしまったのか。

一体誰がここまでしてやったと思ってるんだ。

一体誰がおまえを大きくしてやったと思ってるんだ。

感謝の言葉の一つぐらいあってもいいはずだ。

 

 

そんな言葉を口にしたら、おまえはこう言った。

 

 

『誰も世話して欲しいなんて頼んでない』

 

 

私は何度も、思い切りその頬を殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

何がいけなかったのだろうか。

 

いつからこんなになってしまったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はただ、あの子のためにやっただけだ。

おまえを思ってしてやったんだ。

それの何が間違っているというんだ?

 

 

 

おまえが生まれてからずいぶんと月日が流れた。

 

 

もう私の下におまえはいない。

 

 

静かになった部屋で一人、残された一枚の手紙を見た。

 

 

 

『あなたがしてくれたことは、無償の愛ではなかったんですね』

 

 

 

成長した我が子からのたった一通の手紙。

 

 

 

 

 

見返りを求めていた、

見返りを求めなかった、

 

二つの愛。