――漫画の「クローズ」は以前からご存知でしたか?

「映画化されると聞く前から読んでました。不良経験がない僕が最初に読んだ時は、喧嘩をすることで気持ちを通じ合わせてる人達の、ちょっと次元の違う話かなと思ってました。本当に偶然なんですけど、映画のクランクインが近づくに連れて、プライベートも「クローズ」っぽくなっていったというか…。初めて親友と殴り合い寸前の大喧嘩になったりして、「クローズ」の持つ友情や信念という漢の世界が前よりは理解出来るようになりました。だから作品の特殊な世界観には、思ったよりもすんなり入っていけましたけど、役を演じるに当たっては実体験から引き出せるものが少なかったので悩みました。経験がない分、技術でカバーしようにも新人だからそこで勝負しても勝てないだろうと思い、じゃあ体当たりでぶつかるしかないなと思ったんですけど、体当たりでも勝てるのかなって今度は思いまして。どっちも駄目なんじゃないか!? って悩んだこともあったんですけど、そこは結局手探りでみなさんに支えられて頑張りました」

 

――自分の演じる役が田村忠太だと知った時はどう思いましたか?

「原作にいないけど誰だっけ? って思い台本を見直したんです。台本を読むのはオーディション以来だったんですけど、田村忠太って凄い良い役で、この役をやらせてもらえると思ったら、嬉しいと同時に頑張らなきゃってプレッシャーも感じました。さらに源治と最初に戦う相手だったのもプレッシャーでした。そのシーンで鈴蘭高校の力量が決まっちゃうと思うので、イメージを崩さないように注意しました。源治と戦うシーンは、最初のシーンでもあり僕にとっては勝負のシーンでもあったと思います」

 

――出演が決まって、田村忠太役だとわかる前はどの役をもらえると思っていましたか?

「最初は牧瀬(高橋努)だと思ってました。なぜかというと、自分と牧瀬が一番環境が近いかなと感じてたんです。でも僕って人から見えてる自分と、僕自身が思っている自分との間に結構差があるらしいんです。例えば自分では堂々と見せているつもりが、人から見たら落ち着きないように見えたりするみたいで。そういう人の意見を踏まえると、忠太のほうがよかったかなと思います。台本を読んだ第一印象でも、無骨で友情に熱い牧瀬が凄いかっこいいなって思ったんです。だから初めは漠然と牧瀬がやりたいなっていうのがあったんですけど、今思えば忠太をやれて本当によかったです」

 

――他の現場との雰囲気の差は感じましたか?

「三池監督は役者に自由にやらせてくれるので、その時その瞬間に面白いことがたくさん生まれるんです。だから台本にないことが新しく生まれることは、ほかの現場に比べて桁違いに多かったと思います。しかも新しく生まれたものを三池監督が更に大きく膨らましてくれるので、自分達がその場の思いつきでやったことが最大限活かされるんです。それも現場の芝居状況などで変わるので、ストーリーさながらのまさに戦いなんです。もちろんみんな楽しんで演じてたんですけど、毎回勝負だなって思いはありました」

 

――台本になかったけど追加されたシーンを具体的に教えてもらえますか?

「僕は目が左右に分かれるんですけど、それを監督に言ったら“一回やってみてくれない?”って言われて目が分かれるシーンが増えました。三池監督は、役者の持ってる面白いところをちゃんと拾って活かしてくれるので、本当に役者さんを愛してくれていると感じましたね」

 

――その愛すべき三池監督に演技指導されて印象に残っていることはありますか?

「最初は緊張していた僕を気づかってくれて、“とにかく力を抜いて下さい”と言ってくれました。あとは“漢の強さを持つように、クローズの住人でいて下さい”と言われたのが印象に残っています。『クローズ ZERO』に出てくる人はみんな漢気があって、強くて、一本筋が通っています。そういう部分はもちろん田村忠太にもあるはずなのに、少し忘れかけていた自分がいました。それに気付かれたのか、現場に入ってわりとすぐに指導して頂きました。だから最初に僕が台本読んだ時に自分で思っていた忠太よりも、だいぶ柔らかさが減って漢気が増しているはずです」

 

――服装に関しても、役者のみなさんから三池監督へ提案していたと聞いたのですが

「みなさん提案していましたね。まず僕は、アイパーをかけさせて下さいとお願いしました。最初の設定にアイパーというのはなかったんですけど、とにかく威勢のいい感じにしたかったので、是非やりたいですと提案しました。ただ地毛にアイパーかけたので、日常生活には本当困りました。あとは、撮影が進むにつれてテンションが上がっていって、剃り込みがどんどん深くなっていきました。最後には蓋みたいになって、三池監督にも“訳がわからなくなってる”って言われました。役を作っていったというのでは、最後に忠太を自分の手で変態にしたことです。一番殴られて怪我もしてるのに忠太はなんか嬉しそうなんです。忠太というキャラクターを作ろうと、必死になった結果が変態だったんですけど、監督にも変態になったことで“田村忠太が出来た”と言って頂けたので、結果的にはよかったかなと。きっと忠太もクローズの世界で必死だったと思うんです。そこで役者として必死になった僕と、ようやくリンクしてくれたんだと思います」

 

――自分のシーンについて三池監督に提案したことはありましたか?

「僕は口下手なので、シーンに関してはあまり自分からは提案出来なかったんです。だからカットがかかるまでは、自分のしたいことを好き放題やってアピールするって決めてました。三池監督も、何かありそうだなって感じる時はカットをかけないんです。だから僕は口で提案するよりも、演技みて判断してもらおうと思っていました」

 

――ほかの出演者からも聞いていますが、乱闘シーンで実際に当てたり、当てられたりというのはありましたか?

「それはありました。僕の場合は最初に戦うシーンが源治との立ち回りだったんですけど、緊張してて本当に余裕がなかったんです。そしたら打ち合わせの段階で“僕がここで前に出て旬君を殴りますから”って言いながら本当に殴っちゃったんです(笑)。まさか打ち合わせで殴られるとは旬君も思っていなかったのか、訳がわからないという表情で立ち尽くしていました。僕も少し経ってから旬君のこと殴っちゃったって気づいたので、凄い焦りました。それぐらい現場の雰囲気に飲まれそうだったので、必死の抵抗というか…そしたら本当に殴っちゃって、しかも結構いいのが入ったんです。旬君は笑って許してくれたんでよかったですけど、ほかの人も実際に当たってることはありました。でもそれが作品としていい出来に繋がるのなら、当てられてもみんな何も言わなかったですね」

 

――小栗さんと山田さんもお互いに当てていこうぐらい言っていたと聞きましたが

「僕も“さあどうぞ。さあ当てて下さい”という姿勢でいましたし、旬君にも“殺す気で来い!”って実際に言われました。そしたら打ち合わせの時に殴っちゃったんですけど(笑)。でも殴りあう前に当てていくって確認しなくても、みんな当てようが当てられようが関係ないっていう意識だったと思います」

 

――そこまで気持ちが入っていたのなら、最後の大乱闘シーンは感動したんじゃないですか?

「もう、あのシーンは…言葉にならないです。あの広い校庭で雨の中の雰囲気。それに最後は三上兄弟(伊﨑央登・伊﨑右典)とタイマン張るんですけど、僕のプライベートで一番の親友がまさにあのふたりなんです。それに人生で初めて本気で喧嘩したのも央登君(三上豪)となんで、まさかのタイマンだったんです。そういう意味では助かったというか、やりやすかったと思います。本気の喧嘩ってお互い仲が良くて信頼しているからこそしちゃうと思うんで、そういう部分は妙にリアルでした。あいつとだからこそ、あのタイマンが出来たと思います」

 

――なんかクローズの住人みたいな発言ですね

「(笑)」

 

――撮影が終わるとよく飲んでいたと聞きましたが、鈴之助さんも参加していましたか?

「有名なレモンサワーの会には参加してました。出演者同士は本当に仲が良かったので、撮影が終わるとみんなで飯食いに行って、飲んで、色々なこと話しました。芝居のことからプライベートなことまで全部話しましたね。あの話し合いが次の日の現場で活かされてたなっていうのはあります」

 

――演技の話はやはりGPS内で話し合うことが多かったですか?

「そうですね。もちろん芹沢軍団とも仲良いんですけど、演技に関してはGPS4人で話し合うことが多かったです。あとは事務所の先輩ということもあって、旬君には本当にお世話になりました。“お前が現場で何やろうが、俺を含めみんなでケツ持つから、お前はやりたいようにやれ”って言ってくれて、田村忠太が僕に乗り移ったように、源治さんについていきます!! ってなりました。僕もこの人を愛してついていこう。喰らいついて勉強させてもらおうって本気で思いました。僕の中ではGPSのメンバーといる時は、リアルクローズの世界でした」

 

――実はGPSじゃなくて芹沢軍団に入りたかったという思いはありましたか?

「いや、僕は源治さんに会えて幸せだったんでGPSでよかったです。それに芹沢軍団に忠太がいたら、誰にも相手にされなかったんじゃないかなと思うんです。おそらく幹部の中に入れなくて、その他大勢の中のひとりだったんじゃないかなと思います。下手したらいじめられてたかもしれません。でもGPSでは源治さんが面倒見てくれたので、あの位置にいられたんだと思います」

 

――田村忠太が出演しているシーンで一番印象に残っているのはどのシーンですか?

「やっぱり最後の乱闘シーンです。あのシーンは待ち望んでいたシーンだし、自分でも勝負と思って挑んだところなんで印象に残っています。それに、あれだけの人数が殺気立ってこっちに向かってくるだけでも、凄いテンションが上がるんです。あの空間と雰囲気は本当凄かったですし、今思い出しても楽しくて夢のようでした」

 

――乱闘シーン以外で好きなシーンはありますか?

「戦いの合間にある仲間同士で和気あいあいとしているシーンは好きです。例えばダーツバーのシーンなんか、色々なものから開放されて、鈴蘭にいる時とは違う顔が見れるのでいいですね。あとは自分の出ているシーンではないんですけど、牧瀬の合コンのシーン。あそこはずっと笑ってました。あれは現場で見たら凄かったですよ! 周りもみんな笑ってました。実際の努君はかなりお茶目な性格なので、あのシーンも地で演じてるんじゃないですか? って思いました」

 

――あれが地ですか…(笑)。これから作品を観る方に、牧瀬に負けないように田村忠太をアピールして下さい

「変態でもなんでも筋は通せるんだってところですね。忠太の変態だけじゃない不器用な野性を感じてもらいたいです。あと…もしよろしければなんですけど、優しい目で観て頂ければと思います。あと長い目で、暖かい目で忠太を包み込んで頂きたいです。根はいい奴で、寂しがりやなんです(笑)」

 

――作品全体を通して、観て頂きたいところ感じて頂きたいところはどこですか?

「口下手なんであまり上手く言えないですけど、今って筋を通す、ケジメをつける、自分の信念を貫くってことが、普通の生活では気付かなかったりわからないと思うんです。でも『クローズ ZERO』という映画は、そういう普段接することが出来ない部分を肌で感じとれる映画になっているので、そこが魅力かなと思います。漢として、人として大事な部分を体現して見せてくれるんです。喧嘩のシーンでもそれは当てはまるんです。ただの暴力じゃなくて、意味のある喧嘩だってことをわかって頂きたいです」

 

――最後の終わり方を観ると、続きがありそうですよね

「僕も続きが観たいです。まだまだ語り尽くし足りない部分がたくさんあると思うので、続編を期待しちゃいますね。もちろん続編を作るのであれば出たいです。そしたら、またアイパーかけてもっともっと剃り込みが深くなっちゃうので、きっと頭が燃えカスみたいになっちゃいます」

 

――もし本当に続編が作られるとしたら、どういうストーリーを想像しますか?

「今回の作品は鈴蘭高校内での話だったので、ほかの高校とはどうなのかなっていうのは凄い気になります。この作品を観てもらえばみなさんがそれぞれの続編を想像してくれるんじゃないかと思うんですが、僕自身も続編が観てみたいですし、作って頂きたい。そしてまた出たいです」

 

――続編にも是非、田村忠太で出て頂きたいですね! 続編に出るためにもこれからも俳優一本でいきますか?

「実は俳優でずっとやっていこうというケジメとして、今年大学を辞めたんです。僕は凄い飽きっぽい性格なんですけど、役者とか演技っていうのはずっとやっていきたいと思ったので、この世界でやるしかないと決断しました。別に自分を俳優という生き方だけに縛っているわけではないんですけど、数ある職業の中で自然に俳優が自分の中には残ったという感じです」

 

――理想の俳優像はありますか?

「自分にないものは演技でなかなか出せないと思うので、色々な経験を一杯して自分の引き出しを増やしていきたいです。今回は『クローズ ZERO』で漢気や絆みたいなものを伝えられたと思うので、これからも僕という役者のフィルターを通して、僕が感じる僕でしか伝えられない部分を増やしていけたらいいなと思います。あとは家族を大切にしていきたいと思います(笑)。やっぱり生きているうえで大切なものなので、天寿を全うしたいなと。そういう部分は俳優としての原動力になるはずなんです。あとは素敵な女性と出会って、幸せになれば俳優としてもプラスになると思うんです。僕はみんなに幸せになってほしくて、そのために俳優をやっているのというのもあるので、僕の演技を観て幸せになってくれれば最高です。誰も不幸にならないで幸せになることって素敵ですよね、本当に素敵…うん素敵(笑)」

 

――素敵といえば声が素敵なので、舞台で映えそうですね

「そうですか? でも実は、ちょうど舞台をやらせて頂くことが決まっていて、今稽古中なんです。昔朗読劇はやったことあるんですけど、舞台は初めてなので、期待に添えられるように頑張ります」