fan・著

 

ここは僕のいる世界。

そう、色が少ないんだ。

この世界はなんてつまらないのだろう。

この机だって、壁だって、自分だって全てがつまらない。

まるでこの色のようだ。



机に座ってみたって、紙を見つめてみたって、何も変わりはし
ない。

むしろ、わずかな色さえも消えてなくなってしまいそうだ。

何故、僕は生きてるのだろう。

何故、この世界に来てしまったのだろう。

でも、ここが実に楽なんだ。



その横に突如ゆりかごが出現した。

不安ではあったが勇気を出して眺めてみた。

誰もいない...。

寂しい気持ちが僕の心の中を埋め尽くした。

ふと、風が吹いてそのゆりかごがかすかに揺れた。

僕はもう一度しっかりと覗き込む。

すると、どうだろう。



ゆりかごの中にはうっすらと赤ん坊の姿が。

なんという事だ...。

その子はとても美しい色をしている。

桃色の頬に透き通る肌。

まぶしいくらいの赤い産着が目の前にみえる。

忘れていた感覚が瞬時に呼び戻され、僕の心はオレンジ色のよ
うに

暖かく、そして、緩やかに溶けていった。

ああ、僕は思わず笑みをこぼした。



そうか、ただ僕は忘れていただけなんだ。

もともと僕にも色があったことを。

自分で狭めてしまった場所でしか生きていなかったから

いつしか見えなくなってしまったんだ。



抜け出そう、ここから。

そして一つづつでいい。色を取り戻そう。

将来生まれてくる僕の子供の為に。

勇気をもって...。

さあ。色を忘れた君も一緒に...。