加美能・著

 

【明日の途中】

 

 

この世には、ステージに立つ者とステージを見ている者、二種類の人間がいるっていうのを知っている?

ベルベットの幕が、向こう側とこちら側の境界線。

ステージのこちら側の者は、ステージの向こう側に立つ者に、憧れ、羨み、夢を見て、ある時は自分を向こう側の人間に重ねてみる。

自分がステージの向こう側にいたら、どうなんだろう?と。。。

ステージの向こう側から見たこちら側は、一体どうなんだろうか?と。。。

 

 

そうそう。見て見て。あの傘をさしている青年。

彼はベルベットの幕の向こう側に立つのを夢見ているみたい。

ステージの向こう側に立つ為に、努力はしてるみたいなんだけど。

行き詰まると必ずこの公園に来てる。

晴れだって、雨だって、雪だって、嵐だって、昼だって、夜だって関係ない。

行き詰まれば、いつだってここに来る。

明日、来月、1年後、10年後、50年後の自分が見えなくて、不安で不安で仕方がないみたい。

 

才能は、あるみたい。

努力は、している。

頭は、いいみたい。

運は、まだ巡って来ないみたい。

まぁいい。まだ若いのだし。

ステージの向こう側に立つよりも、まずはまともな人間になることが先だから。

 

 

あぁ。ほらほら。また始まった。

彼の癖は観察。

今日はゴミ箱を見て、色々想像しているみたい。

捨てられているゴミを見て、一体どんな人がどんな状況で、このゴミ箱にゴミを捨てたのかを想像している。

「このお菓子の袋。買ったのは女の子。きっと高校生。これを買ったのは学校の前にあるコンビニかな?学校のみんなと食べようと思って大きい袋のお菓子を買って。学校帰りに食べ尽くしちゃって、このゴミ箱の横を通って行った。今頃はきっと定期テストが終わってほっとしているとこかな。今は、カラオケにでも行ってるんじゃないのかなー。カラオケが終わって友達と別れて、家に帰ったら今日はグッスリ寝られるね。」っていう具合に。

 

 

一通りの想像が終わったところで、また彼は現に戻って考え込む。

現実と妄想の繰り返し。

何事にも真剣すぎるから行き詰っちゃうのだけどね。

もうちょっと、世の中を馬鹿にしてみるのもいいんだけど。

 

それでも彼は幸せだよ。

だって、やりたいことを既に見つけているのだから。

それでご飯を食べられても、食べられなくても、やりたい事を見つけた彼は幸せこの上ない人だと思う。

 

彼がいつか、グチャグチャになった台本を手に、この公園に戻ってくるのを楽しみしているよ。

 

 

 

 

え?私?何で彼を見ているかって?

さぁ・・・。

たぶん・・・。

 

 

 

ワタシハカレニカナワヌコイデモシタノデショウカ???