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2008年6月20日 (金)

『ハブと拳骨』公開記念!スタッフインタビュー

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+act.15号の尚玄さんインタビューに続き、ブログでは6月21日公開の『ハブと拳骨』制作者インタビューをお届けします。登場するのは、18歳で監督となり、本作が長編映画デビューとなるの中井庸友さんと、『風の絨毯』('02年)でも知られるプロデューサーの山下貴裕さん。第20回東京国際映画祭に続き、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にも出展。ベトナム戦争時の沖縄歓楽街・コザを舞台に、家族の絆や人間のあり方を問うこの作品を、制作者という視点でおふたりに語って頂きました。

――最初に、この作品を作る事になったきっかけを教えて下さい。
中井庸友監督(以下 中井)「僕の師匠・林海象さんから、山下さんと田中雄一郎(原案、音楽、クリエイティブ・ディレクター)を紹介頂いたんです。原案が既にあり、監督を探してるという事で、会議室でいきなり打ち合わせをしたらすぐに意気投合したんです」
山下貴裕プロデューサー(以下 山下)「最初に会った時、(中井監督は)黄色いメガネだったんですよ。雄一郎もいかつい格好をして来ていて“どういう対面?”って思いましたね」
中井「3人とも明らかに、映画人じゃない感じでしたね。けったいなヤツらだな…って(笑)」
山下「うわ!黄色いメガネだって(笑)。集った3人とも同い歳で。。。」
中井「映画が現実的に動くとは、うちの師匠も思ってなかったらしいんですけど、この30代3人の力でいきなり動き出したという流れですね。周りは無謀だと言ってたんですけど、その翌月にはもうシナリオハンティングに行ってました」

――『ハブと拳骨』というタイトルは原案そのままですか?
中井「はい。ハブと拳骨という響きは田中雄一郎が既に持ってたんですよ。このタイトルに惚れたから、やろうと思ったんです。ストーリー全体のプロットはシンプルだったんですけど、熱い兄弟の物語とこのタイトルを見て“絶対にやろう”と思いましたね。それに田中雄一郎も賛同してくれて、物語を書き足していった時に母親像が色濃く出てきたんです。“拳”という言葉も、最初は男の拳というイメージがあったんですけど、ストーリーに母親が出てくる事で、拳は“母親の拳”なんじゃないかっていう3人の共通意識が生まれたんです」
山下「名前が一度浸透すると頭に残るかもしれないんですが、意味がわからないと思われる可能性もあるので、副題を立てるかという案も出てたんです。たまに、“豚骨”とか“骸骨”とか読む方いますから(笑)。“ハブとマングース”と言った方もいますしね。あなたの師匠ですよ(笑)」
中井「行定監督も“これなんて読むの?”って聞いてきたからね。」
山下「でも、結果的にはストレートに『ハブと拳骨』で行こうという事になったんです」

――尚玄さんを主演にという話は、3人がお会いした時から決まっていたのですか?
中井「そうですね。彼とはその更に2年ぐらい前に出会っていたんですが、演技もステージ上のパフォーマンスも正直“出来る”という雰囲気ではなかったんです。でも、彼は非常に素直で、山下さんからも『成長させてくれ』と言われていたのもあって、じゃあ頑張ってみましょうと」
山下「でもなんかね。最悪、本当にダメだったら違う方向もアリというのは、3人の共通意識としてあったんですよ。沖縄の作品ですし、尚玄でやろうっていうのはあったんですけど、主役となるとそこがダメだと全部ダメになってしまうんで、ギリギリまで頑張ってみましょうという事になりました。それぐらいの覚悟はしてましたね」

――尚玄さんの成長を最終的に実感出来たから、そのまま撮影に臨んだと。
中井「そうです。映画作りの空気に触れるためにも、一緒にシナリオハンティングへ行ったり、一緒に飲んだりして、少しずつ雰囲気に慣れさせました。また、本読みとは別に、色々な俳優さんを交えてワークショップをやろうというのが最初から決まっていたんです。このワークショップの段階で、僕がOKを出せなかったら(主演を)変えてくれという話はしてました。ギリギリでしたね。残り1日位でやっとOKを出せました。最後の手として、どんどん追い詰めたんですよ。そうしたら彼も爆発して、色々と表現も広がっていったんで、みんなで目を合わせて“これはいけるぞ”と確信しました」
山下「たぶん、普通の映画のように、映画会社が作ってクランクインと公開日も決まってて、という作り方だったら主役をそこまで試す事は出来ないんですよ」
中井「でも僕らは、尚玄がダメだったら作らないくらいの…」
山下「勢いだったよね」
中井「感覚だったんですよね。でも、ギリギリのところで本人が頑張ったり、誰かが手を差し伸べてくれたりで、いい方向に転がっていったという連続でした」

――では、次に作品についてお聞かせ下さい。本作のロケ地がタイというのは、最初から決まっていたのですか?
中井「最初は考えていなかったんですけど、舞台である沖縄のコザを実際に観に行ったら、町が綺麗になってて僕らが思い描いていた“におい”があまりなかったんですよ。どこか離島でセットを組むかという案もあったんですが、山下さんと田中雄一郎とから“似たような雰囲気がタイにある”という事を聞いて。それで、騙されたと思って一度行ってみましょうという事で、実際に行ったらドンピシャだったんです。人の厚み、生きる力なんかはハマりましたね」

――タイの撮影で印象に残っているエピソードはありますか?
中井「…いっぱいあるけど(笑)。僕はその土地の神様を大事にするほうなんです。ちゃんと感謝して撮影しないと、自然から罰があたると思いながら撮影してるんですが、今回の現場はおのずとそういう気持ちが出てきましたね。小さい町には祈祷する場所のような物があったんですが、気が付くとみんなでそこに手を合わせたり。そういう積み重ねが、撮影中の色々な奇跡を生んでくれたんだと思います(奇跡の詳しい内容はプラスアクト15号の尚玄さんのインタビューにて)」
山下「ロケーションにしても、2日前に突然“使えません”と言われた時があったんですけど、知り合いを通じてたまたま軍隊の上の人に話が出来て、最高の場所で撮影が出来たり。何か潰れると、必ず何かが出てきてくれるんです。撮影に入る前も色々ありましたけど、入ったあとも大変でしたね。途中で現場費がなくなっちゃったり(笑)」

――物語の舞台である沖縄の町や人を表現する時、一番こだわった部分はどこですか?
中井「やっぱり肌の質感だったり、空気感ですね。人って熱いとだれてくるので、その上手くだれた感じの動きだったり、言い回しだったりを大事にしました。キャストに一番求めた物は…プライド。自尊心ですか。この作品は、島人が根強く持ってる気高さを表してるんですよ。動物っぽいですけど、その強さと優しさが際立つようにっていうのは、みんなに言ってました」
山下「尚玄にはずっと“チャーミング、チャーミング”って言ってましたよね」
中井「尚玄は元々、凄い真面目なんですよ。だから現場に入る前はいつも、“お前はムードメーカーで、スタッフと飲む時でも乾杯の音頭はお前がとれ”と。“次の日に影響ないぐらいで遊べ”と言いましたね。主人公の良が本来持っている、可愛らしさを失わないようにと。尚玄は最初は乾杯の音頭にも戸惑ってましたが、途中からは“乾杯は俺の仕事だ”ぐらい馴染んでましたね。三線持って歌い出したり」
山下「尚玄の誕生日が6月20日なんですけど、クランクインが6月21日で、公開も6月21日で。偶然なんですけど、この作品とはやっぱり何かの縁があるんじゃないかなって思いますね」

――4人の家族はもちろんですが、ヤクザや米軍も含めたそれぞれ全てが“ファミリー”と呼べるんじゃないかと思うのですが。
中井「その通りです。共存共栄なんですよ。国の手が入ってないので、生きるために繋がるんですよね、ルールよりも生きるために。自分の村の人や舎弟を守るために戦う親分は、今の僕らが想像しているヤクザの印象とは違いますよね。自分達の欲のためだけにやってる訳じゃないので。村が潤うためにやっている事で、そこに米軍も入ってきて、村で飲み食いさせる。だから米軍がいなくなったら、それはあの時代にとって矛盾がありますよね。僕らは政治家じゃないので、どっちが正しいのかはわかりませんが、こういう時代があってそれを知った事で何かを感じて頂けたらいいですよね」
山下「映画は観る人の生き方や、その時の心情によって観方が変わってくると思うんです。でも、少なくとも『ハブと拳骨』はなんらかのエネルギーを感じる映画になっていると思います。困難な状況でも、誰かを思う事で自分を犠牲にするのか、その犠牲の中で自分が生きていくのかは分かれますけど。でも、そういう人と人との関わりの中で出てくる愛情や力は、どこにいってもはまるじゃないですか。それが困難な場所にいればいる程、顕著に表れてくるんですよ。戦争しているところはもちろんですが、日本もぬるいと言われつつも凄いシビアなところはいっぱいあって、みんな癒しを求めてるじゃないですか。でも、日本人は昔から凄く熱い民族で、自分で何かを掴み取るとか思える、一歩を踏み出すような力になれる映画になってくれれば嬉しいです」

『ハブと拳骨』作品情報
監督:中井庸友
原案・クリエイティブディレクション・音楽:田中雄一郎
プロデューサー:山下貴裕
出演:尚玄 虎牙光揮 宮崎あおい 石田えり 大口広司 辰巳蒼生ほか
配給:アルゴ・ピクチャーズ

→『ハブと拳骨』公式サイト

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